- 美容師インタビュー | 2017.12.27
お客さまの「かわいい」を見つけて、一歩先の提案を。kaguyahime doui 石黒香奈さん
みなさん、こんにちは。
ヘアドレPress編集部の山内です。
みなさんは、街を歩いているときに、何を考えていますか?
わたしは、ぼんやり歩いていることが多いです。
友達といても「どこ見てるん?」と言われることがわりとよくあります。
石黒さんは、街を歩くとき、なにかおもしろそうなところ、楽しそうなところはないか、いつも探しているのだと言います。
新しいお店をチェックしたり、歩いているひとのファッションを見たり。
少しでも時間が空けば、京都から梅田まで出掛けて行くこともあるそうです。
家にひきこもりがちなわたしには、考えただけでめまいがするほどの行動力です。
ふだんの生活からいろいろなことにアンテナを張って、「楽しい」ことへの探究心にあふれる石黒さんは、見聞きしたものをどのようにサロンワークに繋げているのでしょうか。
「わたしは美容師になるんだ」という確信。
美容師としての経歴を教えてください。
大阪の専門学校に2年間通って、kaguyahimeに就職しました。
スタイリストになったのは4年半目です。
4年目のときに、関西で一番難易度が高いと言われる「三都杯」にはじめて出させてもらって、デザイナーズ賞をいただきました。
そのときはまだアシスタントだったんです。
アシスタントが受賞するのは初めてだったようで、「すごい」って言われるようになっちゃって。
でも、ほんとうはまだできていない技術も、たくさんあったんです。
名前だけ先走ってしまったんですよね。それをきっかけに、もっと美容師を追求するようになりました。
(三都杯デザイナーズコンテストの様子)
スタイリストとしてデビューするまえに、とくに苦労したことは何ですか?
スタイリストとしてデビューするための最後の査定でモデルカットがあるんですけど、それがなかなか合格できなかったんです。
先輩たちはすごく親身に教えてくれるんですけど、それに応えられなくて。ほんとうに辞めようかなと思うくらい落ち込みました。
だから自信をつけるために、すごくたくさんのモデルさんの髪を切らせてもらいました。
街中で「切らせてください」って声をかけて、店の営業が終わってから切らせてもらって。
でも、それを乗り越えてスタイリストになってからは、毎日がめちゃくちゃ楽しいです。
そもそも、なぜ美容師になろうと思ったのでしょうか。
理由がわからないんですけど、保育園に通っていたころからわたしは美容師になるんだと思っていました。
なぜか「世の中には美容師しか仕事がない」と思うくらい、美容師しか考えてなかったですよね。
人を笑顔にする仕事がしたい、それが美容師の仕事しかないって。
ただ、私の地元の美容室でお願いすると、いつも襟足が気に入らない(笑)。
嫌すぎて、手で襟足を隠しながら学校に行ったりしてました。
そこで中学校の時、自宅から2時間近くかかるオシャレなサロンに通うようになりました。
その頃から美容師になりたい想いが、もっと強くなりました。
こんな風に人を喜ばせてキラキラした職場で仕事がしたいって!
美容師になってから広がった「楽しさ」。
美容師になるまえにイメージしていた世界と違うなと思ったことはありますか?
いい意味でぜんぜん違う、と思いましたね。
まず、美容師ってサロンワークだけだと思っていた。
でも入ってみると、クリエイション(普段のサロンワークとは違って、モデルを使ってヘアメイクから撮影まで自由に表現するもの)やコンテストを通して、すごく幅広くたずさわれるんだなと思って。
コンテストのときは、ファッションも自分で作ったり選んだりするのが楽しいです。
服やアクセサリーを作るのも好きなので、自分のイメージにぴったりなものがないときは自分で作ります。
そういう世界もあるから、飽きない。想像以上に楽しいですね。
印象に残っている先輩からの言葉はありますか?
入社してすぐに、「バランス感覚がすごくいいから、そこを伸ばしていくといいよ」と言ってもらったことがあります。
たとえばコラージュ(与えられたテーマを基に、雑誌の切り抜きなどでひとりの女性像と世界観を作り、衣装やヘアスタイルに落とし込んでいくもの)でもバランス感覚を褒めていただけて。
でもそれは、勝手に手が動いて、たまたまバランスがよかったって感じなんです。
これをここに置いて、こうしたからこうなるっていう理論的なものが、わたしはぜんぶ感覚でしかなくて、ただ夢中に、可愛くなるまで手を動かし続けます。
わたしはクリエイションがすごく好きで、kaguyahimeを選んだ理由も、オーナーのクリエイション作品を見たことがきっかけでした。
なので「クリエイションにも向いている」と言ってもらえて、それが嬉しくて、オーナーの仕事にすべてついていき吸収し、私自身もたくさんのことに挑戦してきました。
(最近の石黒さんのコラージュ作品。このときのテーマは「薔薇」)
クリエイションやコンテストに出ていると、どこに行ってもいろんなものを深く観察するようになりました。
そうすると、引き出しがすごく増えるので、どんなお客さまにも対応できるようになるんです。それって強みだなと思っていて。
なので、クリエイションでの経験は、ぜんぶサロンワークにも結びついてると思います。
「自分がどう見られているか」を通して見つけた「自分らしさ」。
技術面以外で、苦労したことはありますか?
わたしは年齢よりも幼く見られがちなので、お客さまに信頼してもらえる応対や雰囲気作りで苦労したことはあります。
年上のお客さまに「この子で大丈夫?」って思われることがわりとあって。そういうところでしんどい時期はありましたね。
服装とか、見た目で変えてみようかなと思ったこともあったんですけど、あんまり変わらなかったですね。前髪を伸ばしてみたりしても(笑)。
なんか違うなって、自分を見失う、とまでは言わないですけど。
だからもう自分らしくやろうと思いました。
たくさんお話をして、自分のことを知ってもらい、好きになってもらえたらいいなって。
とくにこのスタイルが得意だ、というのはありますか?
(お客さまと一緒に♪)
あんまり「これが得意です」っていうのは言わないようにしてるんですよね。
わたしは自分がショートなので、「このひとに任せたら個性的な頭にされるんじゃないか」と思われることが多くて(笑)。そういう固定概念ってあるんだなと思って。
わたしが「ショートが好きです」とかって言うと「めっちゃ切られる!」って思われてしまう(笑)。
kaguyahimeに来てくださる客さまは「ナチュラル寄りで、でもちょっと冒険したい」っていう方がわりと多いんですね。
だから、その「ちょっと冒険したい」の部分を後押ししてあげたい。「こんなふうにしてみたかったけど、できなかった」というのを実現させてあげたいんです。
なので、そのひとにあわせた一歩先の提案をするようにしています。できそうなくらいの、一歩先。
あまりにも冒険心のあるヘアスタイルだと、毎日スタイリングがしんどくなっちゃうじゃないですか。
美容師ができるのはあたりまえでも、お客さまが毎日つづけられなければ意味がないですよね。
そうじゃなくて、「もちろん何もしなくてもかわいく仕上がるんだけど、ちょっとこうするだけでもっとおしゃれだよ」っていうスタイルを作って伝えるようにしています。
それで「これならわたしにもできるな」って思ってもらえれば、無理なく楽しくつづけてもらえると思うので。
接客のうえで心掛けていることはありますか?
最低限の礼儀はわきまえつつ、フレンドリーさを交えるようにしています。
あたりまえのことですが、お客様の雰囲気や空気感を感じとることを大切にしてます。
お客様のその時の気持ちを大切にしたいので、今どういう気分なのかを直接は聞かず会話の中や表情などで読みとれるように心がけてます。
美容室って、髪もこころもきれいにするところだと思っていて。
2ヶ月から3ヶ月に1回お会いする機会で、お客さまはプライベートの悩みも話してくださるので、こころのストレスも洗い流してもらえたらいいなと思うんです。
なので、わたしのことをできるだけはやく近い存在だと感じてもらえたらいいなと思って、接客させていただいています。
一緒に笑顔になっていただけた時は、最高に嬉しいです。
年上のお客さまだと、わたしの服やアクセサリーに興味を持ってくださる方も多いんです。
「わたしには真似できないけど、そのアクセサリーかわいいね」とか。
だから「こういうのをつけるとかわいいですよ」とか、「こういう色が似合うと思いますよ」とか、髪以外のメイクやファッションの話もしますね。
年に一度の旅行は、お客さまや後輩に「夢を与える5日間」に。
プライベートでは、何をしているときが一番楽しいですか?
旅行が大好きです。夏は5日間お休みがもらえるので、旅行に行きますね。
その5日間で夢を与えようと思っていて、今年(2017年)はイギリスに行ってきました。去年はニューヨークで、一昨年はスペイン。
普段はなかなか見られないものを見に行くようにしていて、美術館に行ったり、街やひとを見たり。
海外のひとって、普通に街を歩いているひとでもすごくおしゃれな髪型をしてるんですよ。ボサボサなのにカッコいいなとか。
そういうのも見て、刺激をもらっています。
お客さまや後輩たちにも、旅行のことは詳しく話します。
写真を見せながら「こういうところに行ってきました」「こうしたら行けますよ」という話をすると、「5日間で行けるんだ!」と思っていただけるんですよね。
休みの日にずっと家にいることがほとんどありえなくて。
予定がなくても、お金がなくても、とりあえずお店を見に行ったり、自然や神社を見に行ったり、友達と約束したり。外に出るようにしています。
(イギリス旅行中の石黒さん。ロンドンの美術館「テート・モダン」にて)
国内旅行も好きですね、日本が大好きなので。
青森までひとりで行ったこともありますよ。
わたしは末っ子なので、2人の兄の後ろをついて行くことが多かったんです。
就職してからも、アシスタントとして下で働くことが多く、先輩に従ってついてく期間が長かったんです。
そんな自分が嫌になってきて。自分で考えて行動したいなと思って、旅行するようになりました。
後輩にも、自分なりの「楽しい」「かわいい」を見つけてほしい。
(石黒さんとスタッフのみなさん)
石黒さんの今後の展望を教えてください。
コンテストで賞をいただいたり、こうしてヘアドレで取り上げていただいたりしてきて、美容業界のなかで少しは自分の名前を出せたかなという実感はあるんです。
なので、今度は同じように後輩からそういうひとが出てきてほしいなと思っています。
でも後輩を育てるのって、ほんとうに難しいんですよね。
スタイリストになるまえに辞めてしまうひともすごく多いので、最初の地味な過程をいかに楽しいと思わせるかが問題です。
そこを乗り越えたらこんなに楽しいよって見せてあげたいと思うんですけど、あんまり一生懸命になりすぎるとうざったいと思われたりとか……(笑)。
でも、頑張っている後輩には、わたしが先輩に教わったことを伝えたり、いろんな場所に連れて行ってあげたりするようにしています。
一緒に同じモノを見て、みんなで共有、共感したいんです。楽しいことならなおさら。
後輩たちには、いろんなものをいっぱい見たほうがいいと言っています。
賞に入ることだけがいいことじゃなくて、自分がかわいいと思うものをたくさん見つけていってほしい。
そういう経験がお客さまにも伝わって、「美容室に来るのが楽しい」「またあなたに切ってもらいたい」と思っていただけるような美容師になれるんだと思います。
お客様の笑顔が大好きです。自分の手で人を笑顔にできる仕事って最高ですよね。
「次はオーロラを見に行きたいです。ウユニ湖も行きたい。いっぱいあります、行きたいところ」とほんとうに楽しそうに話す石黒さん。
こらからもあらゆるところから「楽しい」「かわいい」を敏感にキャッチして、きっとお客さまにぴったりな提案に繋げてくれることでしょう。
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