- 美容師インタビュー | 2018.04.03
【京都・四条烏丸の美容室Snob Eternita】美容師として、強さを増し続ける情熱
みなさんこんにちは。
ヘアドレPress編集部の大迫です。
みなさんは情熱を持って取り組んでいることはありますか?
やる気に燃えてはじめたことでも、だんだん熱が冷めてくることってありますよね。
京都のサロンSnob Eternitaの統括店長 / Art Directorをつとめる金谷二郎さんは、美容師をはじめて20年以上、新人のころに抱いた熱い情熱を今でも持ち続けているそうです。
多くのリピーターを抱える人気の美容師になっても、初心を忘れず、モチベーションを保つ秘訣はどこにあるのでしょうか?
美容師としての豊富な経験を通してうかがいました。
美容師として、さらなる飛躍を求め広島から京都へ
美容師なったきっかけを教えてください。
中学校を卒業してすぐに、広島のサロンで働きはじめました。
高校に進学せず自分の力で食べていけるようになるには、手に職をつけるのがいいという親と中学校の先生からのすすめで美容師になったんです。
それ以来、16歳のときからずっと美容師をしています。
広島のサロンでは6年勤め、最後の2年ほどは店長をさせてもらっていました。
仕事は楽しかったのですが、教えてもらったことが一通りできるようになると、次に自分は何を目指せばいいのだろうと思うようになりました。
その後、京都のsnobさんで働きはじめたのはなぜですか?
オーナーの吉田隆司にあこがれてsnobにやってきました。
目標を見失っていた当時、ヘアサロンの業界誌に吉田がつくったヘアスタイルの写真が載っていました。
それが斬新ですごくかっこよかったんです。
▲入社前に金谷さんが影響を受けたsnobオーナー吉田さんのフォト作品
僕も吉田のように、自分の感性と技術で新しいヘアスタイルをつくれる美容師になりたいと強く思いました。
それで広島のサロンを辞め、吉田のもとで働きはじめました。
今から18年前、ちょうど2000年のことです。
広島のサロンでは店長として活躍されていたそうですが、snobさんに来てからも、すぐにスタイリストとしてご活躍されたのですか?
▲snob入社当時、デッサンの勉強会に取り組む金谷さん(写真中央後ろ)
いいえ、snobではアシスタントからのスタートでした。
今でもそうなんですが、中途で入ってきた人も、新人と同じところからはじめます。
独自のカリキュラムで学びながら、高水準の技術を習得した者だけが、お客さまのカットをすることができます。
同じお店なのに美容師によってクオリティが違うと、snob全体の信頼が保てなくなりますよね。
中途半端な技術とデザイン力でお客さまの対応をすると、リピートもしていただけません。
美容師はお客さまと近い距離で接するので、細かな手つきや所作、立ち居振る舞いといったところも大切だと思っています。
どこまで気を配ってお客さまに接しているのか、といった仕事に対するスタンスまで、動作を通じて伝わるんですね。
そこまで満足していただけるレベルに到達するまで、大体5~6年かかります。
高いレベルの技術の習得は、難しいとは思いませんでしたか?
僕は1年半でカリキュラムを終えてスタイリストになり、3年目からはsnob enVAmp店の店長をさせてもらいました。
特に困難だとは思わなかったですね。
吉田がお客さまに接している姿や、モデルを使って作品をつくるところを間近で見るようになり、常に刺激を受けていたのが良かったのかもしれません。
こういうふうになりたい、というあこがれの存在に一歩でも近づきたくて、僕はどんな技術の練習も情熱を持って取り組むことができました。
クリエイションを通して見つけた、自分の原点
▲最近の金谷さんのクリエイション作品
クリエイション活動(モデルを使って前衛的なヘアデザインをつくること)にも力を注いできたそうですね。
僕がsnobに来たのは、吉田のように独自のヘアデザインを作品にしたいという思いがあったからです。
2年目の2001年には、モデルのヘアデザインを写真に収めた作品で勝敗を競うコンテスト、JHA(Japan Hairdressing Awards:「年度ごとに顕著な創作活動をした美容技術者を部門別に表彰」するコンテスト。1990年にスタート)に出しました。
JHAは吉田が2000年にグランプリを獲得しているコンテストということもあって、思い切って挑戦させてもらったんです。
サロンの営業が終わってから翌朝まで、ヘアスタイルをつくって撮影をしたこともありました。
このとき僕は熱が出ていて、体は辛かったですが、楽しさも感じていました。
新しいヘアスタイルをつくりたいという気持ちを、作品に思い切りぶつけられたからです。
今振り返ると、これが自分の再スタートであり、原点になったと思います。
2001年は、会場でモデルのヘアスタイルをつくって技術を競うコンテスト、三都杯にも出場し、決勝に進出することができました。
ですがその後、何年ものあいだ、コンテストで結果が出ることはありませんでした。
2012年に、全国でも屈指の難易度の三都杯でグランプリを獲得されています。
2001年から10年以上のあいだ、コンテストにはずっと参加されていたのでしょうか。
コンテストには今でも毎年、参加し続けています。
コンテストに出場し続けることで、情熱を保てている気がします。
一度、足を止めてしまうと、また最初のころと同じ情熱を持って走り出すことはなかなかできませんよね。
結果が出なくて諦めるとか、反対に評価に満足して出場しなくなる人も少なくないようですが、継続することが大切だと思います。
悔しい思いをしても、それは次に成長できるチャンスでもあります。
僕は「来年こそはいい結果を出そう」という思いで、コンテストに参加し続けてきました。三都杯のグランプリ獲得は、地道に積み重ねてきたことが結果になって現れたのだと思います。
▲2012年三都杯デザイナーズコンテストグランプリ受賞時の様子
20年のキャリアで見えてきた、サロンワークの在り方
サロンでお客さまに接する際に、重視しているのはどんなことですか?
お客さまを鏡の前にご案内したときのファーストインプレッションと、ご希望をうかがうカウンセリングです。
お客さまは最初、「この美容師は、どんな感じにしてくれるのかな?」という不安な気持ちを抱えておられるはずです。
不安が解消されないまま施術がはじまると、「自分のヘアスタイルはこれからどうなっていくのだろう?」という時間が続いて、すごく苦痛ですよね。
もちろん苦痛ではなく、癒しの時間を過ごしていただく場所がヘアサロンです。
落ち着いた言葉づかいや立ち居振る舞い、そして誠実なカウンセリングで、はじめに安心感を持っていただくことが重要なんです。
カウンセリングではどんなことに気をつけていますか?
お客さまのご希望を、時間をかけて細部までうかがうのが、いいカウンセリングではないと思います。
ヘアスタイルのイメージを言葉で正確に伝えるのは、難しいことなんです。
1から10まで聞くよりも、3割くらいの説明で察知できる力があれば、お客さまにも負担をかけません。
言葉を先読みして、イメージをくみ取り、ヘアスタイルを提案するようにしています。
お客さまのイメージ通りか、それをさらに超えるものが素早く提示できれば、「この人には任せたほうがよさそう」と思っていただけます。
はじめの不安がクリアになって、信頼していただけたということです。
ある程度任せていただければ、カウンセリングの時間が短くなり、カットやカラーなどを行う時間が増えるので、さらなる満足にもつながると思います。
これまで美容師を続けてきて、サロンでお客さまに接する際に変わったことはありますか?
10年以上通っていただいているお客さまが、5割から6割くらいおられます。
お客さまと一緒に歳を重ねてきた僕は今、40歳です。
若いころは気軽な感じで言葉を交わしていましたが、今は言葉づかいひとつにも気をつけて、適度な距離感を心がけるようになりました。
サロンの後輩にも言っているのですが、美容師が自分ことばかり話すのではなく、お客さまからお話ししてもらえるような美容師になったほうがいいと思います。
言葉を交わすコミュニケーションも大事ですが、お客さまとはヘアスタイルを通じてつながっていることを忘れてはいけません。
例えばヘアカラーをするなら、「こういう理由でこの色にさせてもらいます」と、自分の知識と感覚を生かし、そのお客さまにとってベストな提案を丁寧に説明する。
仕事に向き合う誠実さや一生懸命さは必ず伝わり、信頼していただける実感があります。
カットについては、どんな進歩がありましたか?
ヘアスタイルの見た目だけではなくて、スタイリングのしやすさや形の崩れにくさといった部分にも力を入れるようになりました。
デザインを気に入ってもらうことは大前提ですが、お手入れがしやすいと、さらによろこんでいただけます。
僕がカットした次の日からは、お客さまが自分でスタイリングをすることになります。
次にサロンに来るまでのあいだ、ヘアスタイルがしっくりこないというのは辛いですよね。
お客さまの感想を聞いたり、カットの手法を少しずつ変えたりして、同じヘアスタイルでも見えないところに改良を加えてきたんです。
今までコツコツやってきたことが形になり、よろこんでいただけているのだと思います。
▲これまでsnob Eternita店で受賞したトロフィーの数々
今後の目標を教えてください。
▲Snob Eternitaではたらくスタッフの皆さん
2008年にSnob Eternitaがオープンし、店長をさせていただいて今年で10年目です。
僕は40歳になりましたが、美容師の仕事や作品づくりに対する情熱は、新人のころよりもますます強くなっているんですね。
20代、30代のころよりもやれることが増えているので、さらに活躍できるチャンスがあります。
あと10年もすれば、サロンの現場よりも、運営のほうがメインの仕事になると思います。
それまでに僕が培ってきた技術や知識を、できるだけ後輩に伝え、仕事を任せられるようにしていきたいです。
さらに多くのお客さまによろこんでもらえる仕事をしたいと思いますし、かつて吉田が獲得したJHAのグランプリを目指してコンテストの参加も続けていきたいですね。
はじめの情熱を保つどころか、年齢を重ねて、さらにやる気が出てきたという金谷さん。
経験に裏打ちされた自信が、落ち着いた動作や言葉の端々から感じられました。
話の中にもあったように、「自分のヘアスタイルをこの人に任せたい」と初対面で思わせられる安心感がありました。
店内の重厚な雰囲気の中、金谷さんにカットしてもうと、どんな素晴らしい体験ができるのか楽しみです。
ここで紹介した内容以外にも、HairDreの紹介ページでは最近の活動風景やメニュー内容なども確認できます。
ぜひこちらもチェックしてくださいね。
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