- 美容師インタビュー | 2018.09.06
【京都 山科エリアの美容室 Marais(マレ)】強みは、努力を継続できること 山中周也さん
【この記事は京都造形芸術大学 文芸表現学科のみなさんとともに制作・発信しています】
みなさんこんにちは。
ヘアドレPress編集部の川村と大迫です。
今回は京都市山科区にあるサロン、Marais(マレ)の山中周也さんをご紹介します。
Maraisという店名はフランス・パリの旧市街地、マレ地区が由来。
店内はアンティークの家具が並ぶ非日常的な空間です。
Maraisへの道のりは、山科駅前交差点を西に進みます。
ところどころに町屋が残る旧東海道を7分ほど行くと、マンションの1階にレンガと白壁の西洋風の入口が見つかります。
扉を開けると京都にあるとは思えないフランスの歴史的地域をイメージした空間が現れ、親しみやすい美容師さんが笑顔で迎えてくれます。
Maraisのオーナー・美容師が山中周也さんです。
山中さんがお店の雰囲気づくり以上に重視しているのは、スタッフさんや山中さん自身の人間性だそうです。
そう思うようになったこれまでの足跡や、今後の展望をうかがいました。
サロンワークは一回一回が勝負
サロンワークで心がけていることを教えてください。
一人一人のお客さまについて、しっかり考えて向き合うことを意識しています。
僕ら美容師は一日に何人もの髪を切りますが、お客さまにとっては1カ月とか2カ月に1回の貴重な機会です。
だから一回一回が勝負だと思って髪を切っています。
例えば同じボブでも、カットする髪の長さなどによって雰囲気は大きく変わります。
「きれいな感じ」とか「かわいい感じ」といっても、人によって基準は変わりますよね。
その微妙な違いをおろそかにせず、お好みのイメージがはっきりつかめるまでお聞きしています。
ですからヘアスタイルについてはもちろん、ライフスタイルや好きな音楽、あこがれの女性像、そのときの気分など、いろいろなことをお聞きしたうえで最適な提案をすることを心がけています。
お客さまの希望より少し違うヘアスタイルが似合うと感じた場合はどうしますか?
まずはお客さまがどうなりたいと思っているかが大事です。
そこに僕自身の考えをプラスして提案することもあります。
例えばご希望のヘアスタイルよりもう少し切った方が似合うと思えば、それもお伝えしています。
ほんのちょっとだけでも冒険してみて喜んでいただけたら、このサロンに来た意味があると思いますし、とても嬉しいですね。
もちろん「絶対こっちの方が似合う」という確信があるから、少し攻めた提案をしています。
カウンセリングで一度お客さまの目線になったうえで、僕の経験や感覚を交えれば、いつもとは少し違うヘアスタイルを喜んでいただけると思います。
お客さまとの会話は多いほうでしょうか?
会話は多いと思います
ゆっくりしたい雰囲気のお客さまにはあまり話しかけませんが、そういう方は少ないですね。
静かにゆっくりというのは、ここではあまり求められていないのかなと思います。
インテリアは店名のとおりパリのMarais(マレ)をイメージしていますが、うちのサロンはおしゃれに敏感な方ばかりを意識しているわけではないんです。
雰囲気は堅苦しくなくて、とってもアットホームですよ。
▲フランスのマレ地区の雰囲気をイメージした店内。
趣のあるアンティークの雑貨やイスが並ぶ
「人」が一番大事
お客さまとのつながりを重視しているんですね。
そうですね。
サロンの雰囲気とか、つくるヘアスタイルがいいというのも重要なポイントですが、結局「人」が一番大事だと思います。
「人」というのは、髪を切っている僕やスタッフの人間性のことです。
やっぱり髪を切ってもらうなら、美容師という仕事に真剣に向き合っている人がいいですよね。
そういう美容師なら信頼していただけますし自然と会話も弾みます。
だから僕は美容師の技術とセンスを競うコンテストに10年ほど前から毎年、出場し続けているんです。
2016年は三都杯(全国でも有数の難易度をほこる、美容師の技術とセンスを競うコンテスト)で決勝に進み入賞することができました。
2017年は残念ながら選ばれませんでしたが、諦めず今年もチャレンジし、再び決勝に出られる6名に選ばれることができました。
結果にはもちろんこだわりますが、何よりも頑張り続けることこそ意味があると感じて挑戦しています。
その頑張ることの意味とは何でしょうか?
頑張ったからこそ感じるうれしい経験や、悔しい経験というのは目には見えなんですが、どんどん蓄積されて、お客さまにもなんとなく伝わっているような実感があります。
お客さまがサロンに来るのは、ただ髪型を整えることだけが目的じゃないですよね。
例えばとても辛いことがあって気分を変えたいとか、大事な人に会うのが楽しみだからおしゃれしようとか、いろんな気持ちで来られると思うんですよ。
そういった気持ちを理解できるというか、共感できるというか、頑張った末の経験があれば何か少しでも伝わることがあるような気がしています。
まだ完璧ではないですが、もっと経験を積んでヘアスタイルはもちろん、それ以外のモノも与えられるような美容師になりたいですね。
欠かせない日々の努力の積み重ね
美容師になろうと思ったのはなぜですか?
中学、高校のころに行っていたサロンがとてもおしゃれで、雰囲気が好きだったんですね。
そこで働く美容師さんの服装も立ち居振る舞いもかっこよくて、「自分もこんなふうになりたいな」とあこがれるようになりました。
当時放送されていた木村拓哉さんが美容師役のドラマ『ビューティフルライフ』にも影響を受けました。
ドラマの中に出てきたリュックやバイクまで買って、真似をしていたくらいです(笑)
美容師として働きはじめたときのことを教えてください。
独立するまで8年間働いて得られたものは、今思い返すとすごく大きかったですね。
お客さまに接する際の心構えや、同じ店舗で働くスタッフに対する教育といった、当たり前ですけど人として忘れてはいけないことを徹底して学ばせてもらったと思います。
技術はどうやって身に着けましたか?
僕はあまり器用じゃないので、技術はたくさん失敗しながら地道に身に付けてきました。
美容師になりたてのころは、技術の面でも接客の面でもいろんな失敗がありました。
失敗したことはとにかく何度も何度も練習して身に付けました。
割とすぐにできる器用な人もいるんですが、僕は数日練習したからといってパっとうまくはならないので、日々の努力の積み重ねが欠かせないと思っています。
新しいことに挑戦するために独立
▲2018年三都杯デザイナーズコンテスト モデル作品
サロンワークとコンテストの共通点はありますか?
日々の努力が必要というのはどちらも同じですよ。
例えば三都杯は何度も出ていますが、初めのほうはまったく歯が立たちませんでした。
でも続けているうちに徐々に手ごたえを感じてきています。
今では「勝てそうなヘアスタイル」ではなく「自分がつくりたいヘアスタイル」で自信を持って挑戦できるようになってきたと思います。
サロンワークでも経験を積んで技術を磨いてきたからこそ、自信を持ってちょっと攻めた提案もできるんです。
コンテストに挑戦してみようと思ったのはなぜですか?
独立したのは2013年のことですが、その少し前に三都杯を見学したんです。
そこには美容学校時代の同級生が出場していて、つくっているヘアスタイルも頑張っている姿もすごくかっこよくて衝撃を受けました。
それまではコンテストがどんなものかほとんど知らなかったので、「こんな世界があるのか」と思って自分もやってみたくなりました。
さっきも話したように以前働いていたサロンでは多くのことを学ばせてもらいましたが、コンテストに力を入れているわけではなかったんです。
将来のことも考えると、コンテストなどの新しいことに挑戦していくには自分の店を持ったほうがいいと考えたのが、独立した大きな理由のひとつですね。
お客さまの喜ぶ顔がモチベーション
独立してからの6年で、美容師の仕事に対する心境の変化はありますか?
サロンの方針や雰囲気づくり、コンテストに力を入れるなど、自分の思った通りにできるのは独立してよかったことですね。
その反面、すべての責任は自分にあるというのも常に実感しています。
楽しいことばかりではないですが、サロンをさらに良くしようというモチベーションを保ちつづけているのは、お客さまが来てくれるからです。
以前働いていたサロンで常連だったお客さまも来てくださっているのは、本当にありがたいことです。
家族で通ってくださる方もいて、お子さんの成長を見るのも楽しいですね。
独立してからさらに「お客さまのために頑張ろう」と思うようになりました。
コンテストをはじめたきっかけは「かっこいいから」ですが、今ではコンテストを通して身に付けた技術でお客さまに喜んでもらいたいというのが大きなモチベーションになっています。
サロンワークで特にうれしいと思うのはどんなときですか?
髪を切ったあとにお客さまが喜んでくれることももちろんうれしいですが、次に来店されたときに、そのお客さまが周りの人から「その髪型いいね」って言われたと聞いたときですね。
ご本人が髪型を気に入ることも大事ですが、周りから「いいね」って言われたらさらにテンションが上がると思うんですよ。
そういうお話を聞いたときは僕もとてもうれしくなりますね。
他にもいろいろありますが、常連のお客さまにお子さんができて、その子の髪を切るときもすごくうれしいですね
今後の目標を教えてください。
コンテストでは、まず今年2018年の三都杯の決勝で力を出し切ることが目標です。
これまで何度も挑戦してきた大会ですので、培った経験を思い切りぶつけて優勝したいですね。
スタッフの織戸(琢也さん)も、コンテストに挑戦していい結果が出ています。彼らが力をつけるためのバックアップは、サロンをあげてやっていきます。
それと、スタッフを増やしたいと思っています。
新しい人が増えると、今いるスタッフが教えることで彼ら自身の成長にもつながるはずです。
「人」が大事だという山中さんの言葉には、地道な努力を重ねてきた実感がこもっていて、とても説得力がありました。
明るくそして真剣に、お客さまに向き合ってくれる山中さんに、私も髪を切ってもらいたいと感じました。
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