- 話題 | 2018.09.10
100人以上の美容師が技術とセンスをぶつけ合う! 『三都杯 DESIGNER’S CONTEST 2018』開催!
本当の実力を備えた美容師を決める最高難度のコンテスト
日本で最も難易度が高いと言われる美容師さんのコンテスト、『三都杯 DESIGNER’S CONTEST 2018』が8月27日に開催されました。
三都杯は毎年京都で行われ、今年で23回を迎えます。
他のコンテストと違うのは、最新の流行を発信する「パリコレクション」の要素を取り入れていることです。
開催されたのは合計5部門。
中でもデザイナーズ部門とU-29デザイナーズ部門で好成績を収めた美容師さんは、本当の実力を備えた「ヘアドレ認定美容師」として、ヘアドレに掲載されます。
2つの部門を中心に、白熱する会場をレポートします!
みなさまこんにちは。
ヘアドレPress編集部の大迫です。
三都杯といえば「日本一難しいコンテスト」とか「決勝の舞台に立つのが目標」と、ヘアドレに載っている美容師さんたちは熱く語ります。
私自身は三都杯どころかコンテストを見るのも初めてです。
会場ではどんな競技が行われ、どう審査されるのでしょうか?
そしてどの美容師さんが、「ヘアドレ認定美容師」に加わるのでしょうか?
1.やる気に満ちた美容師さんが会場に集結
会場は平安神宮そばにある京都市勧業館(みやこめっせ)。
36℃をこえる猛暑の中、関西エリアを中心に多くの美容師さんが続々と集まってきます。
広い会場で150名をこえる美容師さんが、競技を行うテーブルにスタンバイ。
テーブルにはウィッグがずらりと並んでいます。
次の競技に参加する美容さんたちも脇の席に着いています。
いつでも競技が行える体制で開会式が行われました。
美容師さんたちは、やる気に満ちた表情で舞台を見つめています。
舞台上では審査員の紹介や主催者の激励の挨拶が行われ、会場の緊張感が高まっていきます。
2.審査員は関西と東京の大物美容師
審査をするのは、プロフェッショナル審査員として
MINXの岡村享央さん
DADA CuBicの古城隆さん
Nicole.の西村晃一さん
gemの森川丈二さん
SOHO/ヨハコのKAAKOさん
の5名の美容師さんです。
関西や東京を拠点に活躍する美容業界の中でも有名な美容師さんばかりです。
さらに美容専門誌「SHINBIYO(新美容出版)」「HAIR MODE(女性モード社)」「BOB(髪書房)」「IZANAGI(髪の文化舎)」4誌の編集者も審査員をつとめました。
3.美容師の総合力が問われる2種の競技
デザイナーズ部門とU-29デザイナーズ部門の競技は2種類。
・テーマに合わせてモデルさんのヘアスタイルをつくり、衣装などもデザインする「モデルデザイン」(競技時間 40分)
2種類の競技により、技術力はもちろんヘアデザインのセンスなど、美容師としての総合的な力が問われます。
4.カットの技術力が問われる「スタイルフォトカット」
まずは「スタイルフォトカット」競技が行われました。
写真を見てその通りにカットするというのは、普段のサロンワークには欠かせない力ですね。
4-1.「スタイルフォト」課題写真発表!
競技開始前、美容師さんが準備にとりかかります。
一人に一つ与えられたウィッグをとかし、霧吹きで湿らせていきます。
そして課題となるヘアスタイルの写真が、巨大なスクリーンに映し出されます。
当日初めて発表された課題写真、表示されるのは10分間だけです。
美容師さんたちは画用紙に何かを描いています。
課題のヘアスタイルをただスケッチしているのではなく、より正確にカットできるようにダイヤグラム(展開図)というものを描いているそうです。
これを描けるようになるにも訓練が必要なのだとか。
4-2.いよいよ「スタイルフォト」競技開始!
「用意、スタート!」のかけ声で、競技が始まりました。
早速ハサミを手にカットにとりかかる美容師さんもいれば、丁寧にダイアグラムを描いていたり、ウィッグの髪を梳かしつつスクリーンを見上げていたり、取り組み方はさまざまです。
とはいえ誰もがわき目もふらず真剣なまなざし。
やがて全員がカットに移り、切られた髪が足元にたまっていきます。
ロングヘアーだったウィッグが課題のヘアスタイルに近づいていきます。
大体のカットが終わると、ドライヤーを手にしてセットにとりかかります。
時間いっぱいまでドライヤーの音が聞こえていました。
4-3.競技終了後すぐに審査を実施
競技が終了すると、すぐに審査に移ります。
一見同じようなウィッグも、並べて見ると前髪の長さや量、サイドの角度、襟足など、どれも違っています。
写真通りのヘアスタイルをつくるには、高い技術力が必要なのだと感じました。
100をこえるウィッグ一つ一つに、5人の審査員が点数をつけていきます。
角度を変えて丹念にウィッグを見つめる審査員の表情も真剣です。
基本的なカットの技術力と、どれだけ写真のヘアスタイルをうまく再現しているかを見ているそうです。
果たしてどれが高得点を獲得するのでしょうか?
4-4.審査員にインタビュー! 「スタイルフォト」審査のポイント
▲今回の課題写真
「スタイルフォトカット」の課題のヘアスタイルをカットした、審査員の古城隆さん(DADA CuBic)に審査のポイントをお聞きしました。
――審査ポイントを教えてください。
課題写真を分析するときは、デザインはもちろんですが、まずは女性像のイメージ、そしてシルエットレングスをよく見ることが大事です。
カットについては、イメージ通りにウエイトの位置、シルエット、レングスをつくること。
たとえウィッグでもモノとして扱うのではなく、「人」として表現してほしいと思います。
その上でバランス感覚の良さ、仕上がりのていねいさを感じさせる作品を高く評価しています。
▲課題を正確にカットするための「ダイアグラム(展開図)」
今回はウエイトの位置なども大事ですが、ポイントは前髪です。
前から見たときに重い感じがする作品が多くありました。
ちょっと言葉は悪いですが、(カットしたモデルの)撮影は上手だけど、カットが下手な人が増えているんですよね。
ちゃんとした技術力があってクリエイション(モデルを使って前衛的な作品をつくること)もできる、そういう美容師が増えてほしいと思います。
5.ヘアデザインのセンスが問われる「モデルデザイン」
続いて「モデルデザイン」競技が行われました。
最新のパリコレクションのトレンドを元に、ファッション業界誌「WWD ビューティ」編集長 大出剛士さんがテーマを設定されます。
モデルさんのヘアスタイルだけではなく、衣装やメイクなども組み合わせ、このテーマに沿った作品をつくり上げます。
ヘアスタイルをつくる技術力に加え、ヘアデザインのセンスが問われます。
5-1.競技開始前から熱気に満ちた会場
美容師さんはそれぞれイメージに合ったモデルさんを連れてきています。
モデルさんは、すでにメイクやヘアカラーは済ませ衣装も身に着けています。
美容師さんは競技が始まるまで、モデルさんの髪をとかしたり少し離れて眺めたりしながら、これまで準備してきたことが発揮できるよう集中力を高めている様子。
美容師さんたちは何ヶ月もデザインなどを考え抜いて、「モデルデザイン」に挑むそうです。
競技エリアの周りには、数多くのギャラリーが集まっています。
開始前から会場には熱気が満ち、三都杯のメインイベントという雰囲気があります。
5-2.テーマは「NEO STREET」
今年のテーマは「NEO STREET」です。
街で生まれたストリートファッション。
日本では90年代の裏原ブームととともに広まったと言われ、今でも幅広い層を取り込んで進化し続けています。
「NEO STREET」とは、直訳すれば「新しいストリートファッション」。
美容師さんは、このテーマをどう表現するのでしょうか?
5-3.「モデルデザイン」競技開始!
「用意、スタート!」の合図で、一斉にカットが始まります。
ハサミを握る美容師さんのひたむきな表情から、“最高のヘアスタイルをつくる”という熱い気持ちが伝わってきます。
周囲の通路がふさがるほどギャラリーが増え、会場の熱気も高まります。
しばらくすると美容師さんたちはハサミをドライヤーやヘアアイロンなどに持ち替え、髪の毛を立体的にセットしていきます。
角度を変えて眺めたり、ハサミで毛先を調整したり、ヘアスプレーを使ったり、それぞれ違う工程で作業が進められていきます。
できあがっていくのは、オリジナリティあふれるヘアスタイルばかり。
競技終了のアナウンスが流れるまで、どの美容師さんも忙しく手を動かし続けていました。
5-4.競技終了後、その場でオープン審査
競技が終了するとその場で審査が始まります。
モデルさんたちが立ち上がるとギャラリーがざわめきました。
見たこともないヘアスタイルとファッションがずらりと並んだ景色に、私もつい驚きの声をあげました。
ショートとかボブといった、一言で表すことができないような独自性のあるヘアスタイルが揃っています。
ヘアスタイルだけでなく、頭からつま先まで全身のファッションが目をひきます。
ファッションは美容師さんが一から探してきたり、ファッションデザイナーに手配して用意しているそうです。
美容師さんはそれぞれの「NEO STREET」のイメージを、トータルコーディネートで表現しています。
ギャラリーと美容師さんが見つめる中、審査員がモデルさん一人一人に点数をつけていきます。
審査中にモデルさんが手にしているのは競技が始まる前に撮った写真。
審査はカットによってどれだけスタイルが変わったのかもチェックしています。
さらにテーマ性、オリジナリティ、時代性、テクニック、トータルバランス、似合わせの項目を、合計100点満点で点数をつけるそうです。
5-5.審査員にインタビュー!「モデルデザイン」審査のポイント
――「モデルデザイン」で評価したのはどんなところですか?
MINXの岡村享央さん
カットのクオリティはもちろん、テーマ性の中に新しさやインパクトがあるデザインを評価しています。
そしてただ目をひくだけではなく、モデルに似合っていることも重要です。
例えば、Maraisの山中周也さんの作品は、シンプルな色づかいがとてもよく、モデルの個性をうまく引き出しています。
また、YAYOI~BRAINSの桒原拓弥さんの作品は、レイヤーベースに対してのバランスが上手いです。
パーマの質感に新しさがあって、全体のコーディネートもモデルに似合っていました。
いい作品は何かこう、パワーを感じさせます。
DADA CuBic 古城隆さん
grace種村暢さんの作品は、競技前の状態からモデルさんの良さが最大限に引き出されていましたね。
ロングに見えて実はバックは短く切り込んだ斬新なスタイルもチャレンジ精神があって素晴らしいと思いました。
PITS桒原千鶴さんの作品もヘアデザインにオリジナリティがあって新鮮でした。
gem森川丈二さん
TONAI永井啓之さんの作品はシンプルでミニマルなスタイルでファッション性も高くモデルにフィットしていましたね。
毛先の完成度を上げてればさらに良いデザインになったと思います。
6.審査結果発表! ヘアドレ掲載は106人中6人の狭き門!
「スタイルフォトカット」と「モデルデザイン」の審査の結果、競技に参加した106人中、6人の美容師さんが新しくヘアドレに掲載されることになりました。
厳しい審査を通過したのは以下の美容師さんたちです。
おめでとうございます!
YAYOI~BRAINS GRANDE(京都 桂エリア)桒原拓弥さん
Vi・a hair(和歌山 田辺エリア) 津村亜希さん
TONAI(大阪 関目エリア)永井啓之さん
PITS (京都 今出川エリア)桒原千鶴さん
TONAI atil(大阪 京橋・都島エリア)宮田晃佑さん
NABIGE(京都 烏丸・御池エリア)白石亜依子さん
またヘアドレ掲載とは別に、デザイナーズ部門の6人の美容師さんが12月3日に行われる三都杯の決勝に進みます。
中でも以下の2人はすでにヘアドレに掲載されています。
Marais(京都 山科エリア)山中周也さん
grace(神戸 夙川エリア)種村暢さん
7.審査員に三都杯についてインタビュー!
審査員のうちの3名に、三都杯のことやいい美容師の条件について語ってもらいました。
――三都杯とはどんなコンテストですか?
gem 森川丈二さん
三都杯は単にヘアスタイルの仕上がりを評価する他のコンテストとは異なり、読み解く力・技術力・表現力が大変重要です。
この3点はサロンワークの基本です。
美容師の日ごろの自己研鑽が、三都杯での評価につながります。
SOHO/ヨハコ KAAKOさん
私も三都杯に参加して、美容師として育ってきました。
三都杯での経験はサロンワークに必ず生きると思います。
作品に向き合っている時間や想いが、必ず自分の宝物になります。
そして新しい独自のヘアスタイルをつくることで、お客さまへの提案力が上がると思います。
Nicole. 西村晃一さん
三都杯で評価されることは、美容師としての自信になります。
その自信はかならずサロンワークでも活きてきます。
――いい美容師の条件とは何だと思いますか?
gem 森川丈二さん
お客さまのリクエスト・髪質・悩み・趣向・トレンドを考慮し、個性に合わせたスタイル提案ができるのがいい美容師だと思います。
またヘアスタイルに再現性があり、適切なアドバイスができるとさらにいいですね。
SOHO/ヨハコ KAAKOさん
高い技術力はもちろんですが、お客さまの「ありがとう」を大切にできる人がいい美容師だと思います。
一人一人のお客さまのことを想ってヘアスタイルをつくっているかどうかが大切です。
目の前のお客さまと共有する空間、時間を大切にしている人、仕事に対してがむしゃらに楽しむ努力をしてる人。
そういう人が、本当にいいヘアスタイルをつくることができると思います。
Nicole. 西村晃一さん
いい美容師には情熱があります。
情熱は自ずとお客様にも伝わります。
情熱がある人を見極めてください。
三都杯には、美容師さんたちの情熱があふれていました。
わき目もふらず準備をする様子、真剣な表情でハサミを握る姿、そしてでき上がった作品。そのどれもから美容師さんの熱い情熱を感じて圧倒されました。
また独自のヘアスタイルが並び、観客としても見ごたえがあるところに「コレクション」の要素を感じました。
これから審査を通過した7人の美容師さんが新しくヘアドレに掲載されます。
ぜひチェックしてくださいね。
- 関連タグ