- 美容師インタビュー | 2019.01.09
【西宮の美容室 グラース夙川店】お客さまのナチュラルを深く考えることがスタイル作りにつながる
阪急夙川駅南口を降りて徒歩2分、目の前の山手幹線道路を芦屋方面に坂道を登っていくと、道路をはさんだ向いの角にガラス張りのサロンがあります。
▲シンプルで温かみのあるサロンは何度来ても飽きない居心地よさがある。
今回お話しをうかがうのは、2017年の三都杯U-29部門で準優勝など受賞し、2018年三都杯でファイナリストになったスタイリストの種村暢さんです。
高い技術を評価されている種村さんはロマンチストで情熱的な美容師さんですが、はじめはセンス磨きに苦労されたそうです。
しかし現在は失敗から多くを学び、サロンワークをたのしんでいるそうです。
種村さんのサロンワークでの心がけやおしゃれの考え方についてお話を聞かせてもらいました。
長く通っていただきたいからこそ、いつ来ても気持ちのいいサロンでありたい。
graceさんのサロンワークにおいて、大切にしていることは何でしょうか?
私たちのお店ではベーシックを極めることをもっとも大切にしているんです。
技術も接客も、基本を極めようとしているからこそノーマルではなく全体の基準の高いサロンなんです。
たくさんのお客さまに来ていただいているので、みなさんにサービスが平等に行きとどくようにすることをスタッフ全員が意識しています。
例えば様々な種類のサービスやメニューを持っているのって一見良く思えるかもしれませんが、次に来たときはしてもらえないとか、この人はこんなサービスを受けているのにわたしはしてもらえていないとか、サービスにムラがあると結果的にお客さまを悲しませてしまうんです。
サービスというのは自分の気分や都合でするものではなく、いつ来てもだれに対しても分け隔てなくていねいに接することができてはじめて成りたちます。
だから私たちはベーシックを最大限まで高めることを一番に考えているのです。
ベーシックを極めるとは具体的にどういうことをされるんでしょうか?
たとえば、朝礼で発声練習するんです。
はっきりていねいに「おはようございます」って笑顔であいさつできれば、印象がいい人だなって思いますよね。
気持ちのいいあいさつがふつう、あたりまえになるようにするために、毎日欠かさずしています。
いきなりドーンという大きな感動はむずかしいけれど、小さい感動を積み重ねることでお客さまとの関係を深く作り上げたいんです。
長くお付きあいしていきたいからこそ一回きりではなく、いつ来ても気持ちのいいサロンでありたいんです。
自分の感性を信じ、育てるために美容師の道へ
美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。
自分は感性の部分を使うのが得意だなと思っていて、ずっと通っていた美容師さんを見て自分も美容師になろうと思いました。
学生時代、勉強は苦手だったんですが、音楽とか美術とか副教科はわりと得意で、美術の授業で描いた作品が市や県から賞をもらうことも何度かありました。
でもお父さんは大工さん、おじいちゃんは重機の整備士、兄は靴職人と家の男たちはみんな職人で、ぼくは父親を引継いで大工になれって言われていました。
なにかしっくりこないなと思っていたときに、ずっと通っていた美容室のスタイリストさんを見て、自由に自分を表現できる美容師って魅力的だなと思いました。
人と関わるのが好きでおしゃれが好きで、それがどっちもできる職業と思うと進路は美容師になっていました。
専門学校を卒業して、はじめは東京のサロンに就職されたんですよね。
そうですね。上京してずっと憧れていたサロンに入社が決まっていました。
卒業前にもうアシスタントとして入っていたんですが、卒業するまえに試験に落ちてしまいまして……。
働きながらもう一回勉強しなおして試験受けたらいいって言われていたんですが、東京の有名店という厳しい環境のなかで勉強とサロンワークを両立できるか不安になりました。
すごく望んでやっと入ったサロンでしたが、両立できず美容師としての自分が潰れてしまってはやはり意味がないと思い、ちがうサロンに行くことを決意しました。
東京の最先端のトレンドを追っていたけど、これを機会にまずは関西に帰って基礎をしっかり築きたいと思いました。
それで母校の先生に相談すると、graceを勧められたんです。
さっそくgraceに電話したら、オーナーのカットのデモがあると言われ観にいかせてもらったんですけど、もう「すげー!」って、いつのまにか自分が歯茎全開の笑顔になってることに気づきました。
派手な尖ったおしゃれなスタイルはいままでたくさん見てきたし、そういうのがいいものだと思っていたんですが、オーナーが作るスタイルはシンプルなものでした。
でもそのシンプルが品よく360度どこから見てもかっこいい、まさにベーシックを極めたスタイルを観て、いままでにないくらい感動したのをいまでも鮮明に覚えています。
そのときぜったいにここに入りたいと、強く思ったんです。
プライベートに寄りそい、ナチュラルな美しさを引きだす。
種村さんはナチュラルなスタイルを作るのが得意なんですよね。ナチュラルなスタイルを作るポイントを教えてください。
▲種村さんが手がけたスタイルはお客さまにナチュラルにフィットする。
ここをこうすればナチュラルなスタイルになるみたいな、そういうのはないですね。
お客さまの日常を考えながらカットすれば、おのずとその人だけのナチュラルなスタイルになります。
その人の生活のリアルを考えたスタイル作りをしようと思い、日々のことを細かく感じ考えるようになりました。
たとえば朝走っているって聞いたら、走っていたら前髪がこの長さだと鬱陶しくないですかとか、うしろの髪の毛がゆれて顔にべたべたついたりしませんかとかって聞いていきます。
そしたらお客さまも「そうなんです!」って、そういう小さなところでもわかってもらえるとうれしいじゃないですか。
おしゃれさはもちろん大切なんですけど、その人の生活スタイルにも寄りそいつつ、美しいバランスを考えるのがその人にいちばん合ったスタイルになるんです。
ナチュラルなスタイル作りは演出ではなく、なにげない会話からも見えてくるものなんですね。
模索して模索して、いまやっとここに辿りついたという感じです。
美容師になりたてのときはセンスの在り方を、よくわかっていませんでした。
お客さまのスタイルでも、とにかくクリエイティブでかっこいいものを作らなくてはと思い尖ったスタイルばかり提案していたんです。
自分本位だったから、お客さまとの会話も続かなくて天気の話しかできないような美容師だったんです。
でも、お客さまがどんな生活をしていてどんなものが好きなのか、そのとき髪の毛はどう動いているのか、それを考えながらスタイルを作るのもクリエイティブだと気づいたんです。
そしたら自然と会話のリズムも合うようになってきて、いまではカウンセリングがすごくたのしいです。
はじめはセンスの在り方がわからなかったと仰いましたが、どうやってそこを打開したんでしょうか?
とにかくいろんな人の作品を観たり、休日はハイブランド洋服からファストファッションのお店、年齢層やジャンルを問わずいろんなものに触れるようにしました。
そうするうちにどんなジャンルでもそれぞれ特有のよさがあることに気がついたんです。
たとえば50代、60代のミセスファッションも生地の合わせ方や縫製の仕方を見るとおもしろいんです。
品があるデザインでなおかつ動きやすさなど機能性にも優れているなど魅力的なんです。
なにが一番ではなく、それぞれのよさを見つけることでバランスを見極める力がついてきたかなと思っています。
センスの良さとははただ見た目がいいものではなく、その人の生活のことや雰囲気や好みなどいろんなものが混ざりあっているものなんだと考えるようになりました。
観にきてもらった人たちのプレゼントになるようなスタイルを作りたい。
種村さんは2018年の三都杯(関西でもっとも難易度が高いとされるコンテスト)で104名の中から6名のファイナリストに選ばれ、決勝大会では見事デザイナーズ賞を2部門受賞されました。
この大会に取り組まれたときのお気持ちを聞かせてください。
▲2018年三都杯デザイナーズコンテスト 決勝大会の様子
優勝したいという気持ちもそうですが、三都杯の決勝を観にきてくださった方に新しい発見と感動があるような作品にしたいと思い頑張りました。
ぼくも昨年三都杯の決勝を観にいかせてもらったし、賞を獲れなかったコンテストでもほかの人の作品を観ることですごく勉強させてもらったんです。
ぼくのセンスは決してひとりで育てたものではなくて、そうやってほかの人から学んだり、スタッフからも客観的な視点で作品を観てもらったりしてできています。
独りよがりで自己満足な作品よりも、いろんな意見が揉みこまれた作品は洗練されていくと思うんです。
だから自分一人で作っているというよりはみんなで作りあげているという気持ちが大きかったですね。
▲美容師として成長できたのは、graceのみんなのおかげだとおっしゃっていました。
残念ながらグランプリには手が届きませんでしたが、、ぼくがいろんな人から引きだしを増やしてもらったように、観にきてもらった人にもぼくが学んだことがプレゼントできていればいいなと思っています。
そして次回こそ、グランプリを取ってやり切ったと泣きたいです!
いつか大きな夢と向きあうため、自分の芯を太くしていきたい
今後の目標を教えてください。
大きな目標も自分のなかでは考えているんですけど、まずは目の前のことを一生懸命やっていくことを大事にしたいですね。
失敗の多いぼくなんですけどそれを悪いことだと捉えてないし、むしろすすんで失敗していこうと思うくらいなんです。
コンテストでもサロンワークでも、なんとなく成功できてしまうことは自分のなかで抽象的なままで終わってしまいます。
失敗があるから成功がある。
成功するための理屈をハッキリ自分のなかに持っておきたいんです。
コンテストも、サロンワークももっと成長したいから、ひとつひとつの内容を濃くしていくために必要なことだと思っています。
それに、大きな目標のことは未来の自分の楽しみにとってあるんです。
遅かれ早かれ、東京のサロンを辞めたときのように究極の選択をしなければならないときが来ると思います。
でもそれはそれを考えるに然るべき自分になったときに考えようと思っていて、それまでぼくの夢は宝箱にしまっておきます。
種村さんはインタビューがはじまるまえ「ぼくは失敗談が多いんですけど、それも含めて今日は正直にしゃべろうと思うんです」とおっしゃっていました。
自分の失敗を話すことで、だれかのがんばるきっかけになったり背中を押せたりすることがあるからだそうです。
美容師という立場からお客さまに寄りそい、いっしょに歩むことを考えてくれる種村さんにぜひ会ってみてほしいと思うばかりです。
ここで紹介した内容以外にも、HairDreの紹介ページでは最近の活動風景やメニュー内容なども確認できます。
ぜひ、こちらもチェックしてくださいね。
- 関連タグ