- 美容師インタビュー | 2022.04.29
相手の魅力をとことん引き出す、私らしい提案 | AR hair 薬師神 裕美さん
私の魅力を引き出してくれる、個性的なヘアスタイルを叶えたい。
そんな願いに応えてくれるのが、「AR hair(アールヘアー)」の 薬師神裕美さん。
数々のコンテストで受賞し、技術力とセンスの良さに定評があるスタイリストさんです。
SNS等を通して「時短もおしゃれも叶うヘアスタイル」を提案し続けている薬師神さんのスタイルづくりの秘訣を、これまでの美容師人生を振り返りながら伺いました。
大阪市旭区エリアの美容院 AR hair のご紹介
今回インタビューに答えてくださった薬師神さんの勤める大阪市旭区の「AR hair」。
古民家の味わいを残したおしゃれな店内とアットホームな雰囲気で、地元の方を中心に人気のサロンです。
ロケーション
▲ARHairさんのエントランスはグリーンでいっぱい
地下鉄谷町線「関目高殿駅」から国道1号線沿いを北へ。
お店の前に溢れんばかりに並んだ植物が目を惹く2階建ての建物が「AR hair」です。
サロンの雰囲気
▲歴史を感じる梁や柱
2年前に移転した新店舗は、昔ながらの長屋をフルリノベーション。
天井の高い開放感あふれる店内は、古い柱や梁をそのまま残した温かみのある空間になっています。
家族のように仲がいいというスタッフさん達の、親しみやすい接客も人気の秘訣。
サロン全体でお客様との関係を大事にしており、プライベートでもお付き合いのあるお客様も多いのだとか!
▲オーナーの奥様がつくる手作りの焼き菓子販売も!!
居心地の良い空間なので、はじめての方でも安心して過ごすことができます。
ファッションに夢中だった学生時代
現在2人のお子さんを育てながら、サロンワークに加えてコンテストやヘアショーなど店外のお仕事もこなす薬師神さん。
そんな薬師神さんの美容師人生はどのように始まったのでしょうか?
早速お話を伺っていきましょう!
いつ頃から美容師を目指そうと思っていましたか?
中学生のときにはすでに心が決まっていましたね。
子供の頃は和歌山のすごい田舎に住んでいて、門限も厳しい家庭だったので、夜はずっと家で雑誌を読み漁っていました。
その頃からおしゃれが好きで、髪型やお洋服に興味があったんです。
だから将来は「洋服屋さん」か「美容師さん」になろうと2択に絞っていました。
そこから美容師へと気持ちが傾いた理由の一つは、自分の髪質です。
広がりやすい癖毛なので、常にヘアアレンジが必須でした。
自分の髪をアレンジするうちに自然と髪の扱いが得意になっていって、自然と美容師へと意識が向くようになりましたね。
それから両親の勧めもあって美容師になると決意し、高校卒業と同時に大阪の美容学校へ進学しました。
美容学校ではどのように過ごされていましたか?
もう、田舎から大阪に出られたことが嬉しくて嬉しくて!
すっかり弾けている感じになっていましたね(笑)。
大好きな古着のお店が立ち並ぶアメリカ村に行って買い物をしたり、雑誌の読者モデルとして東京に撮影に行ったり・・・。
ファッションにどっぷりハマっていたというか、おしゃれを全力で楽しんだ学生時代でした。
▲読者モデルをされていた学生時代の様子
都会のお店で働きたかったので、卒業後すぐに大阪の美容室に就職しました。
でも、美容師に対してなかなか熱い気持ちにはなれなくって・・・。
淡々と「そのうちデビューして美容師になるんだろうな」と思っていました。
そうして2年間が過ぎた頃、お店の経営が悪化しやむなく退職することに・・・。
スタイリストにならないままの状態でお店を辞め、派遣美容師をしながら就職活動を始めました。
就職活動中はどのように過ごしていましたか?
水曜だけは就活のためにサロン見学や面接にあて、それ以外の日はサロンを掛け持ちして働きました。
派遣先で「就職しませんか?」と声をかけていただく機会も多かったのですが、なかなか新しいお店を決められず・・・。
1年ほど経った後、派遣先としてやってきたのが、「AR hair」です。
何回か来させていただいているうちに就職の話をいただいて、「ずっとここで働きたい」と入社を決意しました。
ドライカットで進める、オーナーのカット技術を学びたいと思ったことが理由の1つ。
そして何より、スタッフやお客様の雰囲気がとても温かくて!
アットホームで居心地のいい空気感が、就職の決め手になりました。
「AR hair」の入社が転機に!全力で仕事と向き合えるようになった理由
AR hair 入社した後に生活の変化はありましたか?
AR hair に入社してから、一気にエンジンをかけて頑張りました。
スイッチが入ったきっかけは、同じレベルの先輩アシスタントさんの存在。
その方が「早くデビューしたい!」という方で、私も負けじと練習時間を増やしましたね。
先輩がモデルさんを呼べば「自分も同じ数絶対呼んでやる!」という感じで、切磋琢磨できたのがよかったかなと思います。
その様子を見てオーナーがキャンペーンを組んでくれて、入社1年後にはスタイリストデビューできました。
当時はデビューまでに平均4〜5年、下積み7年なんてお店も多かった中で早々とデビューできたのは、一緒に頑張ってくれる仲間の存在が大きかったと思います。
AR hairへの入店が美容師としての転機になったのですね
そうですね、その頃からセミナーにも行くようになって、色々なことを学ぶうちにどんどん仕事が楽しくなってきたと思うんですよ。
それまでと違って先々の楽しみが見つかって、「美容師って楽しいな」とやっと思えるようになりました。
だからデビューも楽しみになったし、そこまで駆け抜けるのも辛く感じなかったです。
デビューした後はどうでしたか?
デビューした後は楽しいことが多かったです!
デビュー後1年ぐらいしてコンテストに挑戦し始めて、そこからコンテストにハマっていきました。
それまでコンテストの存在自体知らなくって。
20代後半、周りの同級生が結果を出してきた頃にはじめてコンテストを見にいって、「今まで知らんかった自分やばい」と衝撃を受けました。
そこから「30歳までには何か結果を残さないと!」とスイッチを入れて、翌年から出られるコンテストに片っ端から挑戦しはじめました。
たまたま1回目か2回目の時に審査員賞を頂けたので、余計にコンテストに没頭するようになりましたね。
コンテストを通して身についた「万人受け」と「自分らしさ」のバランス
早々に受賞したということですが、その後のコンテスト結果はいかがでしたか?
▲薬師神さんの創ったフォトコンテスト出展作品
最初はビギナーズラックだったみたいで、その後1年ほど全く結果の出ない時期が続きました。
1回受賞できているからこそ、めちゃくちゃ凹みましたね。
最初に賞をいただいた作品は、自分の「好き」を全て詰め込んだ世界観を作ったんです。
でも自分の「好き」だけじゃ色々な審査員さんには受け入れてもらえないと気がついて。
抜くところは抜いて、でも自分らしいポイントは絶対入れる。
そのちょうどいいバランスを見極められるようになるまで、試行錯誤を繰り返しました。
詰め込みすぎたり、逆に引きすぎたり、自分の得意じゃない要素を入れて失敗してしたり・・・。
たくさんの失敗を通して「万人受け」と「自分らしさ」を両立した作品が作れるようになって、そこからやっと結果が出るようになりました。
作品作りをする上で工夫していることはありますか?
まず1番にモデルを決めるのですが、決まったらモデルの顔写真を携帯の待ち受けにしています。
毎日その子のことを考えながら「どんな世界観だったらこの子にハマるかな」って様々なパターンを想像して。
どんな場面でもその子にぴったりのスタイルが作れるようにするんですよ。
お家での様子や、彼氏といる時の姿など、モデルさんの普段の暮らしにまで想像を膨らませながら作品を考えています。
相手の生活を想像してデザインを考えるので、普段のお客様への提案と似た部分があるかもしれませんね。
コンテストでの取り組みは、サロンワークにどのように活かされていますか?
一歩踏み込んだスタイル提案ができるようになったのは、コンテストのおかげだと思っています。
コンテストではサロンワークと違い、モデルさんの髪を普段は切り込まないようなラインまでカットすることがあります。
「ここまでは大丈夫」という無難なラインからさらに切り込むことで、新しいバランスや可愛さを色々と知ることができました。
大胆なカットを怖がらずに提案できるようになったのは、コンテストで限界まで切り込んだ経験が大きいかなと思います。
思い切って前髪を広げてみたり、眉のかなり上まで切ってみたりと、普段よりも切り込むことで顔の印象や顔の見え方も変わってきます。
そうやってカットで髪型のポイントとなる場所を作りながら、それぞれの個性を活かしたヘアスタイルを提案しています。
ママになって変化したコンテストやサロンワークへの気持ち
現在2人のお子さんがいらっしゃいますが、出産の前後でお仕事やコンテストに対する気持ちに変化はありましたか?
1人目の時は仕事を離れることに心残りがありました。
ちょうど三都杯でグランプリを頂いた後に産休に入ったので、「これからやで!」と盛り上がっている時に仕事を離れなければいけないのが本当に悔しかったです。
「産んだらすぐコンテストに出るんや」って決めて、決意通り翌年にはコンテストに挑戦していました。
でも1回出てみたら自然とコンテストに対する気持ちが落ち着いたんです。
それもあって、子どもが2人になった今は子育てできる時間の尊さをすごく感じています。
上の子が大きくなって、母親が必要な時間って思ったより短いんだなぁと気が付いて。
お仕事はもちろん頑張るんですけど、今は「お母さんでいられる時間」を大切にしたいという気持ちが大きいです。
コンテストに出たり、休みの日を削ってまで仕事したりというよりも、子ども達と一緒に過ごす時間を優先したいと思っています。
また出産後はお客様も変わり、ママさんがほとんどになりましたね。
ママの時間の無さや髪へのストレスが分かるようになったので、時短やお手入れのしやすさも意識して提案をすることが増えました。
例えばゴムだけ出来るアレンジだったり、「こうやってアレンジすると保育園の時に崩れにくいよ」っていう子どものアレンジだったり。
実生活の中から新しい提案が生まれるようになったのは、大きな変化だなぁと思います。
学び続けながら「私らしさ」を更新し続ける美容師に
最後に、今後の展望を教えてください
しばらくはAR hairのみんなと一緒に働きたいと思っています。
というのも最近、若いスタッフと一緒に働ける環境がすごく楽しくて!
技術に関しては教えることがあったとしても、下の子達から学ばせてもらうことはとても多いと感じています。
ファッションや普段の生活などを話していると、自分と全然感覚が違うからびっくりするけれど(笑)。
でも色々な話を聞けるのが楽しいし、今の学ばせてもらえる環境がすごく楽しいです。
美容師としては、顔まわりや前髪のデザインなど、個性が出るラインまで切り込んだ「私らしい提案」を続けていきたいです。
「アレンジが好き」と言ってもらえることも多いので、ご自分でやってもらえるようなアレンジ提案をいつも考えて、何か1つ持って帰っていただけるようにしています。
「また相談しよう!」「前髪は薬師神さんに任せよう!」
そんな風に信頼していただけるような提案をしていきたいと思っています。
不安定なアシスタント時代を経て、常に全力疾走で美容師としての腕やセンスを磨き続けてきた薬師神さん。
駆け抜けるような日々の中で1番嬉しかったことを聞いてみると、「モデルさんやお客様と親密になれたことが嬉しかった」とおっしゃっているのが印象的でした。
サロンワークでもコンテストでも「その人の魅力を最大限引き出したい」と全身全霊で向き合う。
そうやって真摯に人のことを思いやれる彼女だからこそ、沢山の人に愛されるスタイル作りができるのではないでしょうか。
私よりも私のことを考えて髪型を作ってくれる、そんな美容師さんに自分の髪をお任せできたら良いですよね。
薬師神 裕美さんプロフィール
- AR hair トップスタイリスト
和歌山県出身。キャリア16年 - サロンワークに加え、ヘアショーや業界紙撮影、コンテストなど店外の活動も幅広く行う。プライベートでは5歳と2歳のママ。
- ナチュラルとトレンドを組み合わせた個性のあるヘアスタイルで高い支持を得る。
- インスタグラムで発信するハイトーンカラーなどのスタイル提案や、お家でできるヘアアレンジ提案も人気
- 受賞歴
2012 第7回 ホットヘアデザインフォトコンテスト 優秀賞
2013 MILBON PHOTO REVOLUTION デザイナー賞|Lebel DREAM ジャーナル賞
2014 インプレッシブアワード ジャーナル賞2賞|napla DREAMPLUS 武道館入賞|ARIMINO PHOTO PRESENTATION ノミネート
2015 napla DREAMPLUS 武道館出場 |三都杯決勝大会グランプ
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