- 美容師インタビュー | 2022.06.18
【大阪 南船場の美容室Cime】お客様の「今」に合わせた、新しいスタイルを | 店長 谷重伸也さん
「美容室に行っても、いつも同じ髪型になってしまう・・・」そんなことってありませんか?
大阪市の南船場にあるヘアサロン「cime(シーム)」の店長である谷重伸也さんは、「都心型サロンの美容師として、お客様に新しいスタイルを提案していきたい」と言います。
今回は時代の流れを読み取り、自分自身やサロンをアップデートしている谷重伸也さんをご紹介します。
大阪市中央区南船場エリアの美容院 cimeのご紹介
今回インタビューに答えてくださった谷重伸也さんが勤めるのは、大阪市中央区南船場の「cime」。
おしゃれでモード感のあるスタイルを長年発信し続けている、全国有数のトレンドサロンです。
流行に敏感な方はもちろん、多数のメディアからも注目を集めています。
ロケーション
大阪メトロ御堂筋線「心斎橋駅」から「クリスタ長堀」へ。
「北11番出口」階段側から出て右手の「りそな銀行ATM」を右に曲がり、そのまま直進。
右手にセブンイレブンがある十字路を通過し、すぐに右手に見えてくる「福岡デンタルクリニック」の向かいにある建物3階が「cime」です。
サロンの雰囲気
お店のエントランスにはスケートボードをリメイクして作ったという看板や、谷重さんが自ら描いた壁全面のイラストなど、来た人をワクワクさせる遊び心がたっぷり!
海外マンションのようなスタイリッシュな雰囲気の店内はいつも笑い声が溢れ、居心地のいい空気が流れています。
美容師じゃなくて〇〇になりたかった学生時代
現在スタイリストとしてだけでなく、店長業務、撮影やコンテストなどクリエイション部門の統括、専門学校の講師など、幅広く活躍されている谷重さん。
しかしお話を伺ってみると、その美容師人生は意外なところからスタートしていました。
いつから美容師を目指していましたか?
そもそも、美容師になりたいと思ったことなかったんですよ。
元々物作りが好きだったので、実はずっと「宮大工」になりたいと思っていました。
もともと東大にいく子もいるような進学校に通っていたのですが、大学に興味がなくて。
「卒業したら京都で宮大工の修行をしよう」と思っていたところ両親に「資格だけ取ったら?」とアドバイスされ、進学を考えるようになりました。
当時ファッションが好きで、「資格も取れておしゃれな人が多い職業」をイメージした時に思いついたのが「美容師」。
「とりあえず資格をとって、その後に宮大工になろう」と思って、美容専門学校に入りました。
美容専門学校に入った後はどうでしたか?
【学生時代の写真データ提供のご協力をお願いいたします。】
良い生徒ではなかったですね(笑)。
学校よりもアルバイトとか、ジャンベ(南アフリカ起源の太鼓)を使ってストリートライブをやったり、雑誌のスナップ写真に出たりと、お金を稼いでいました。
2年目まではずっと宮大工になろうと思っていたんです。
でも卒業間際になって、同級生がどんどん就職を決めていくのを見ると、ちょっと焦ったというか。
「1回就活して、受かったら働いてみよう。ダメだったら宮大工さんで良いや」と思って、うちのお店に応募しました。
当時は美容師ブームもあって「都会の美容室で働きたい」という人も多かったから、当時はすごい競争率でしたね!
cimeを選んだ決め手は何だったのですか?
このお店を受けようと思ったのは、1番好きなスタイルを作っているサロンだったからです。
就職先を決めるときに、関西のサロンが載っている雑誌を開いて「どこが1番好きかな〜」って考えたんですよ。
その中でも「cime」はどこかクリエイション寄りというか、スタンダードからズレたところがあった。
その「他とは違う」スタイルがいいなぁと思いました。
トレンドサロンの厳しさの中で磨いた集客力
たった1回の就活で、華々しくトレンドサロンへ入社した谷重さん。
しかし待っていたのは、上下関係の厳しいシビアな世界でした。
高倍率の就活を勝ち抜いて、cimeに入社した後はどうでしたか?
抜群に辞めたかったです(笑)。
労働時間も長いし、人間関係も仕事内容も、全てがしんどかったですね。
それでも続けられたのは、時間が経つごとに「辞めたい」という気持ちが減っていったから。
1年目って出来ることが限られているので「人を手伝うだけ」っていう感覚に近かったんです。
でも出来ることが増えるにつれて、「髪型を作る感覚」が分かるようになってきて。
そもそも僕はものづくりが好きで、だからこそ木から物を作る宮大工になりたかった。
「何かを作る感覚」と「髪型を作る感覚」は似ていると感じるようになってからは、面白いと思えるようになりました。
後はもう、お客様に救われましたね。
仕事で嫌なことがあっても、お客様と喋っていたら「面白いな」って。
4年目にデビューする頃にはもう、仕事が楽しかったです!
当時4年目でデビューというと早い印象ですね!
うちは完全なるテスト制で、何年後にデビューっていうのが決まっていません。
「技術テスト」と「売り上げ目標」の2つがクリアできればデビューできます。
大体5年目からデビューすることが多いけれど、僕は1年早いスタートでしたね。
デビュー前の売り上げにみんな苦戦するんですが、僕はそこをクリアするのが結構早かったから。
何か工夫をされていたんですか?
当時はSNSがなかったので、お客様を集めるために雑誌のクレジットを使っていました。
学生時代に知り合ったスナップモデルをしている友人達に「頼むからcime 谷重って書いてくれ」ってお願いして、ひたすら僕の名前を書いてもらっていたんです。
そうしたらデビュー前から「〇〇ちゃんの髪型しているんですか?」とお客様が来てくれるようになりました。
デビュー前から指名されるのはすごい!
でもね、デビューした後に正直「失敗したなぁ」と思ったんですよ。
「〇〇ちゃんをやっているから上手いんだろう」って、自分の実力以上にお客様がきてしまって。
しかも当時、『1ヶ月に100人対応できるようになってこそ一人前!』っていう風潮があったんです。
だからどれだけお客様をお待たせしても周りに頼れず、1人で乗り切るしかなくて・・・。
あの時は周りに対して「冷たいな」って思ったし、お客様にも申し訳ないことをしたなぁと思います。
勝って当たり前!葛藤しながらもやり抜いたコンテスト活動
求められるレベルに応えるために必死だったというデビュー当時。
業界の最先端を走るサロンの一員として、クリエイションでも高いレベルが求められていました。
クリエイション活動はいつから?
1年目から実技の大会とか、ウィッグの大会とかも出ていましたね。
当時は毎週のように雑誌の撮影があったので、それも全部ついていっていました。
僕は雑誌関係の知り合いが多かったので、自然とメディア対応といったプレスの仕事も任されるようになりましたね。
コンテストに出場して、すぐに結果は出ましたか?
【コンテストの写真】
結果は出てたんですよ!
1年目か2年目の時に寝坊していったコンテストで、お店の先輩達を差し置いて優勝したこともあったり(笑)。
当時は三都杯をはじめ、有名コンテストを全部うちのお店が優勝するほど、コンテストに強かった。
だから賞とって当たり前というか、「入賞しないと絶対ダメ」っていう雰囲気がありましたね。
でも僕個人としては、早い段階から「美容師の本分って作品作りじゃないよな」って思ってしまって・・・。
クリエイションは撮影など特別な場面に求められることであって、お客様が求めているものとは違う。
そこに気がついた時から「審査員じゃなくて、お客様に評価されたい」と思っていました。
それでもお店としてコンテストに出ないといけなかったし、出るからには勝てるスタイルを作って賞を取らないといけなかったから、すごく葛藤がありましたね。
「勝って当たり前」って、他のサロンさんにはない厳しさですね・・・。
うちのお店は雑誌の撮影をしていたこともあって、コンテストに参加し始める前から個性的なスタイルを作ることが多かったんです。
お店が成長していくにつれて、さらにクリエイションに力を入れるようになりました。
他のサロンは普通のカラー剤しか使っていない頃からブリーチやヘアマニキュアを使い始めたり、モデル選びにとことんこだわったり・・・。
元々クリエイションに力を入れていたからこそコンテストで勝てるスタイルが作れたし、勝ち続けるうちに求められるレベルが上がっていきましたね。
葛藤しながらも続けたクリエイション活動は、サロンワークにも活かされていますか?
とても活かされていると思います!
コンテストで頑張っている人って、サロンワークだけの人よりも提案の幅が広いと思っていて。
普段は求められないことに挑戦するからこそ、デザイン面とかで他の人よりもちょっと幅の広い提案できると思っています。
提案に幅を持たせると、お客様の反応は変わりましたか?
半々ですかね。
でもお客様と長く付き合うことを考えると、サロンワークだけじゃ難しいなと思っています。
僕の中では、都心型のサロンで「いつも一緒の髪型になる」はNGだと思っていて。
時代や流行も変わるし、お客様のライフスタイルも変わっていく。
それなのにずっと同じ髪型にさせておくのは、美容師としてダメだと思うんです。
僕は「また相談しよう」と思ってもらえるようなスタイルを作る自信があるからこそ、「マンネリ化してきたな」と思ったら一度新しい髪型を提案するようにしています。
いざサロン改革へ!「当たり前」をどんどん変えた店長時代
トレンドサロンの厳しさの中で実力を磨き続けた谷重さんですが、店長になった8年前にはある危機感を持っていたそう。
店長になってから、何か変化はありましたか?
お店の全てを取り仕切っていた前の店長が抜けたことで、最初はみんな「これから大丈夫なんかな」と不安がありました。
この状態からどうやってまとめるかと考えたときに決めたのが、「元店長の真似事はしない」ということ。
前の店長はめちゃくちゃ厳しい人で、僕が店長になる4年くらい前から若い子達はついていけなくなっていたんです。
これまでのやり方は時代に合わない。
だから僕が店長になってからは、働き方改革を始めました。
みんな終電まで残っていたのを、やる事やったら全員すぐに帰らせる。
レッスンの時間を短くして、働く時間を短くする。
上下関係なく、全体が効率よく回るようにアシスタントについてもらう。
そんな風にして労働時間を減らすだけでなく、サロンの在り方を根本から全部変えていきました。
思い切って体制を変えてみると、うまくいくことが多かったですか?
そうですね。
ただその反面、厳しかったからこそ身についた技術を、今の若い子達に全て伝えるのが難しくなりました。
短時間で集中して技術を磨けるように、色々と試行錯誤しています。
技術面以外にお店作りで工夫していることはありますか?
意識しているのは「チームプレー」です。
というのも昔はスタイリストが主体で、アシスタントは補佐みたいな感じがあった。
そこからスタッフ全員でお客様とコミュニケーションをとるようにして、アットホームな雰囲気を感じていただけるようにしています。
あとはSNSを通して、カラースタイルを中心にトレンドヘアを積極的に発信しています。
以前は雑誌を見てお客様が来てくださっていましたが、今はInstagramを見て来てくださるお客様が多くなりました。
ブリーチの仕方や薬剤の調合など、キレイな色をのせるには技術が欠かせません。
うちのお店はこれまでコンテストを通して技術を磨いてきたからこそ、今でもトレンドスタイルをいち早く提供できていますね。
やりたいことをやり切る!行動力あふれるプライベート
お仕事だけでなく、プライベートでも全力な谷重さん。
趣味の登山も、どんどんレベルが上がっているのだとか!
私生活では登山が趣味とのことですが、いつから始められたのですか?
店長になる前はサロンワークに毎週の撮影、プレスと忙しくて、休める環境じゃなかったんです。
でも色々と改革していく中で、自分の休みも作れるようになって。
それで「やりたいことをしよう」と始めたのが、登山です。
今は1番高いところで、5,000mくらい。
これまではコロナで断念していましたが、今年の秋にはヒマラヤへ行こうと思っています!
ヒマラヤまで!趣味をそこまで突き詰めるのはすごいですね!
やりたいと思ったことを辞める理由がないから、「やるしかない!」みたいな(笑)。
そもそも勿体無いですよ、1日1日が。
もし自分が80歳になった時に、「今の40歳の1日を10万で買いますか?」って言われたら・・・買うんですよね。
じゃあ、今日には10万円の価値があるってこと。
山登りに限らず、後から「あれ、しておけばよかったな」っていうのはできるだけ減らしたいなと思っています。
いつまでも「やりたいこと」に挑戦し続けたい
いつも「今」に全力投球な谷重さん。
今後はどんな活躍をされていくのでしょうか?
最後に、今後の展望を教えてください
実は美容師にこだわらず、他の仕事もやってみたいなと思っているんです。
登山やダイビングのライセンスを活かした仕事を始めるのもいいし、「ハイク&フライ」という日本にはないスポーツに関わる活動も面白そうだなぁと思っています。
あとは、飲食店もしてみたい!
それだけやりたいことがあって、それでも今まで美容師を続けてきた理由は?
美容師をしながらでも、やりたいことは全部できたからですね。
例えばヒマラヤだって、美容師やりながらでも登れちゃったりとか。
今の世の中美容師に限らず、もっとみんな自由でいい!
いつも「やりたいことをやろう」って思っています。
厳しい環境でもめげず、求められることに1つずつ応えてきた谷重さん。
その行動力の裏には、目の前のことに真剣に向き合ってきたからこそ身についた「自信」がありました。
今の私にぴったりの、新しいヘアスタイルに挑戦したい。
谷重さんなら、そんな私たちの背中を力強く押してくれるに違いありません!
谷重伸也さんプロフィール
- 外部メーカーの講師、コレクションや様々な雑誌のヘアメイク活動、美容学校の講師
またフォトグラファーとして専門誌・一般誌のカメラワークなどを行う。 - ルベルデザインアワード 2010、2011 ファイナリスト
- 三都杯2011 入賞
- ミルボン フォトレボリューション ファイナリスト
- ヴェルナーデザイナーズ 優勝
- 三都杯2013入賞
- ウエラ トレンドヴィジョン2014エリアファイナル
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